陳情第11 「緊急事態基本法」の早期制定を求める意見書提出に関する陳情

【付託】 平成23年第4回定例会

【要旨】
 地方自治法第99条の規定により,本議会から,国会及び政府において,「緊急事態基本法」を早急に制定するよう要望する「意見書」を提出していただきたい。

【理由】
 今回の東日本大震災における我が国の対応は,当初「想定外」という言葉に代表されるように,緊急事態における取り組みの甘さを国民と世界に広く知らしめる結果となった。世界の多数の国々は今回のような大規模自然災害時には「非常事態宣言」を発令し,政府主導のもとに震災救援と復興に対処しているのである。
 我が国のように平時体制のまま国家的緊急事態を乗り切ろうとすると,前衛部隊の自衛隊,警察,消防などの初動態勢,例えば部隊の移動,私有物の撤去,土地の収用などに手間取り,救援活動にさまざまな支障を来し,その結果さらに被害が拡大するのである。
 また原発事故への初動対応の遅れは,事故情報の第1次発信先が国ではなく,事故を起こした東京電力当事者というところに問題がある。さらに言えば,我が国の憲法はその前文に代表されるように平時を想定した文面となっており,各国に見られるように外部からの武力攻撃,テロや大規模自然災害を想定した「非常事態条項」が明記されていない。
 平成16年5月にはその不備を補足すべく,民主,自民,公明三党が「緊急事態基本法」の制定で合意したが,今日まで置き去りにされている。昨年来,中国漁船尖閣事件,ロシア閣僚級のたび重なる北方領土の訪問,北朝鮮核ミサイルの脅威など,自然災害以外にも国民の生命,財産,安全を脅かす事態が発生している。
 よって,国会及び政府において,「緊急事態基本法」を早急に制定するよう要望する「意見書」を本議会から,提出していただきたい。


【委員長報告】
 当委員会は,本件の審査にあたり12月12日及び1月30日に執行部担当者の出席を求めて委員会を開催し,審査を実施したところでございます。 本陳情の趣旨は,先般の東日本大震災のような大規模自然災害や,外部からの武力攻撃などが発生した場合を緊急事態とし,政府主導での対処を可能とするために,緊急事態基本法の早期制定を求める意見書を,国に対して提出することを当市議会に求めるものでございます。
 はじめに,12月12日に開催しました委員会の審査の経過について,申し上げます。 審査において,はじめに本陳情の受理の経緯及び概要について事務局から説明を受けました。その後,委員からは,「今必要なことは,有事体制の強化ではなく,今回の震災や原発事故から学んだことを生かし,必要な措置を急ぐことである」という意見や「尖閣諸島や北方領土などの諸問題は,外交努力によって解決すべきである。」,「このような法律は時期尚早ではないか」という意見,また「本陳情には,看過できない文言もあるが,願意そのものは,妥当性を欠くものではない」という意見が出されました。その後,より慎重な審査を期すため,本件について継続審査を求める意見があり,この日の審査においては,継続審査としたところであります。
  次に,1月30日に開催しました委員会の審査の経過について申し上げます。 審査では,事務局から緊急事態基本法に関する現状について説明を受けた後,前回の審査を踏まえ,各委員に意見を求めました。委員からは,「この動きは,今回の大震災や原発事故を利用して有事体制を強化しようという狙いがあるが,大震災においても現在の法律で十分対応ができたことからも不採択とすべきである」という意見,また,本陳情中の「私有物の撤去」や「土地の収用」を政府主導で可能とするような表現の部分に疑問を持たれている意見もあるが,陳情全体の願意そのものは妥当であるという意見。さらには,「前回の審査では,時期尚早との考えもあったが,ここ最近で大きく変化した世界の情勢なかで,日本の置かれている立場を考えたときには,このような法律も必要ではないか」などの意見が出されました。以上の審査の後,討論する者はなく,本陳情について採決いたしましたところ,「採択すべきもの」と決した次第であります。
 以上が,当委員会に付託されました陳情第11の審査の経過と結果であります。

【結果】 採択