陳情第16 「医師養成定員を減らす政府方針の見直しを求める意見書」を国に提出することを求める陳情

【付託】
 平成30年第4回定例会

【陳情趣旨】
 OECD(経済協力開発機構)加盟国の人口1,000人当りの医師数が平均3.3人であるのに対し,日本は2.4人,35か国中30位であり,医療に従事している医師の総数30万8,105人(2016年)は,OECD平均と比べて11万5,000人も少なく,日本の絶対的な医師の不足が浮き彫りとなっています(OECD,2016年調査)。
 総務省「就業構造基本調査」によれば,週労働時間が60時間を超える医師の割合は,41.8%と職種別で最も高く(雇用者全体では14%),特に,救急や産科では,週の平均労働時間が80〜90時間を超えています。夜間の救急対応のための当直を含む32時間連続勤務が強いられ,医師の過労死や過労自死が後を絶たず,いのちを守る現場で,医師のいのちが脅かされています。また,全国医師ユニオンが2017年におこなった勤務医労働実態調査(有効回答1,803名)によれば,月の休みが1日も取れていない医師が10.2%存在し,「労働条件で改善したいこと」の問いに「完全休日を増やす」が50.0%で1位,さらに「改善に有効な方法」の問いに対して「医師数の増員」が63.7%と圧倒的な1位となり,医師数の絶対的な不足の解消を勤務医自身が最も必要と求めている実態が明らかとなりました。
 また,東京医科大学で女性の不当差別入試が発覚しましたが,前理事長が述べた「女性医師は,男性医師に劣る」や,「女性は年齢を重ねると医師としてのアクティビティ(活動性)が下がる」などの発言は「女性は長時間勤務できないという意昧でいわれていた」と調査委員会が説明しました。過労死や過労自死をももたらす,医師の異常な長時間労働をなくし,男性医師も女性医師も差別や偏見なく人間らしい働き方を実現するためにも,医師の大幅増員こそ求められます。
 ところが,厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」は,「第3次中間とりまとめ」(2018年5月31日)において,遅くとも2033年頃には医師の需給が均衡するとして,2022年度以降の医学部定員の減員に向け,医師養成数の方針等を見直していくべきとの方針を示し,これを受けて政府は,「骨太方針2018」で2022年度以降の医学部定員減について検討することを打ち出しました。
 しかし,厚労省が定員減の根拠とする医師需給推計は,医師の労働時間を最大週80時間とするケースも含まれ,医療需要の見込みは,入院ベッドを減らすという地域医療構想に連動しています。医療需要を少なく見積もり,長時間労働ありきを前提に割り出された推計を根拠とする定員減の方針は,長時間労働解消の議論に真っ向から対立するものです。救急・産科・小児科などの医師不足で,医師数の抑制を転換して増加を実現してきた現在の医師養成数の水準を引き下げれば,再び地域医療崩壊の危機を招きかねません。
 ご存知のように,茨城県の医師数(人口10万人対)は平成14年以降連続で全国ワースト2位が続いており,大井川知事は「茨城県医師不足緊急対策行動宣言」(2018年2月23日)を発出して,県民一丸となって医師確保対策に取り組むことを呼びかけています。医師の養成定員が減少しては,茨城県への医師の誘致も厳しさを増す課題となります。日本の医療崩壊を防ぎ,地域住民が安心して暮らせる救急医療や地域包括ケア体制の充実のため,医師の増員を引き続き求めていくものです。
 以上を踏まえ,貴議会としても,地域住民のいのちと健康を守る立場から,また,茨城県の医師確保に力を入れる方針にも沿い,以下の内容を「医師養成定員を減らす政府方針の見直しを求める意見書」として国に対して上げていただきますよう陳情するものです。



 2022年度以降の医師養成定員減という方針を見直し,医療現場と地域の実態を踏まえ,医師数をOECD平均以上の水準に増やすこと。

【付託先】
 教育福祉環境委員会

【委員長報告の要旨】
 委員からは「願意は妥当である。しかしながら,さらに地域に踏み込んだ内容の意見書とするため,医師数の偏りを解消する対策を求める文言を追加してはどうか」との意見が出されました。

【結果】
 採択